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2020.3.5お知らせ, ブログ/活動報告, 中高年しごと物語いしかわ

中高年しごと物語いしかわ ~プライドを持つ・プライドを捨てる~

 

大手ディーラーにて洗車業務のお仕事で活躍されているSさんは現在64歳。ハキハキとお話されるそのお姿は爽やかで、第一線のビジネスマンとしてまだまだ活躍されていそうな印象を受けます。しかし、現在のお仕事に勤められるまでに様々な経緯や葛藤があったそうです。

Sさんは36年間食品関係の営業や管理のお仕事に従事されて来ましたが、やむを得ない事情で退職されます。当時の58歳のSさんの思いはこうだったそうです。「58歳ならまだまだこの業界で需要があるのでは?一から新しいことをする気力は無い気がする」そして食品関係の仕事を知人などから紹介してもらい、就職しましたが、長く続きませんでした。再び別の食品関係の会社に勤めますが、同じ結果となり、1年半で3社を渡ることになりました。その後も毎日のようにハローワークへ行き、インターネットでも毎日求人の検索をしたのですが、中々良い仕事とは巡り合うことができません。

Sさんは当時のことを振り返ります。「あの頃の私は、まだ自分は出来るんじゃないかという甘い認識を抱いていました。世間の認識と自分の認識がズレていたんです。仕事もせずに家にいると自分が粗大ごみのように思えました」そんなSさんに奥様は仕事について何も言うことはなかったそうです。「でもそれが返ってプレッシャーでした」

そんなSさんに転機が訪れました。ハローワークから紹介された職業訓練に通い始めたのです。そこではパソコンの勉強だけでなく、次の就職に向けての自己分析や労働市場の学びの時間がありました。Sさんはそこで改めて自分と向き合う機会を得て、少しずつ考え方を変えて行きました。

「自分の希望ばかりじゃダメだ。世間のニーズに合わせるためには、希望を下げ、今より幅を広げた視点で仕事を探すことが必要だ」Sさんは希望の職種に対して考えを整理していきます。まず、絶対にこれだけはやりたくないことを除外しました。そして、今までの経験やスキルだけでなく、プライベートで自分の好きなことにも視点を向けてみます。

Sさんは車が好きでした。そんな中で見つけたのがディーラーでの洗車の仕事でした。「自分の好きな車にいつも触れられる仕事。悪くないかもしれない」正社員の仕事ではなかったのですが、そのこだわりも捨てました。

 

「僕はプライドばかりが先に立ち、妥協するのが遅すぎたのかもしれません。でも、捨ててしまったら世界が広がったんです」

 

洗車の仕事に応募し、面接になると採用担当者にこう聞かれたそうです。「1日に30~40台洗うことになるけど、大丈夫?」Sさんは健康体力に自信があることをアピールし、採用されました。就業してからもやはり体力がいる仕事だと実感しましたが、以前より体力がつき、身体も絞れてきたそうです。

 

「ずっと仕事人間で仕事が9.5割、家庭が0.5割でした。でも今は正社員でなくなったため時間ができた。仕事4割、家庭5割、自分のこと1割になりましたよ」プライベートの過ごし方をお尋ねすると、昔お母さまがしていた畑を引き継ぐようになったそう。「それでもまだ時間はあるので、何をしようか今吟味しています。そんな時間も楽しい」

 

「でもね、今までのキャリアは決して無駄にはなっていないんですよ。それこそ、車の洗車なんて誰でもできる。でも、僕は自分の存在感を出していきたいから、今までの人生経験で培った若い方にはできない気配りをして、雇って良かったと思ってもらえるように日々業務に取り組んでいます」

 

そんなSさんの努力が伺えるエピソードがあります。「お恥ずかしい話なんですが、入社して5カ月目に車をぶつけてしまったんです。さすがにこれは責任を取らないとお思い、会社に辞めますと伝えに行きました」

会社の責任者はそれを聞いてこう言ったそうです「そんなこと言わないでくれ。今Sさんが辞めることの方が会社にとって損失だから」Sさんはパートでも今僕は必要とされているんだ、と胸が熱くなったそうです。

 

Sさんは再就職にあたって少し遠回りをしてしまったかもしれません。ただ、ご自分の弱さと向き合い、そして第二の人生において生き抜いていくためのご自分の強みを発見する時間だったに違いありません。

以前何かのキャッチフレーズでこのようなものがあったと思います。「プライドを持つ。プライドを捨てる」Sさんの格好良さを表現するのにぴったりな言葉だと思いました。

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